「別に会えなくなるわけじゃないだろ?」
父さんが苦笑いを浮かべて諭すように言う
「会えないよ、遠いから」
最早拗ねたような口調で返すが、確かにそうなのだ
実際に子供からしたら引っ越しという距離は遠く思えるのだ
きっと父さんは車で行けば、なんて思っていたのかもしれないがそれこそ無理に等しい
「だからって、そんなに落ち込んでたらつーちゃんも悲しいだろう?」
「わかってるってば」
母さんと同じようなことを言われてつい反抗的になってしまった
クッキーのいい匂いが悲しみを誘うようで目頭が熱くなる
「慎、つーちゃんママたちにあげるクッキー味見してみて?」
可愛らしく型どられたそれを母さんはニコニコと出してくる
なんだか釈然としない不安定な気持ちで手を伸ばした
あったかい…
作りたてのクッキーはあったかくてとても美味しかった
「美味しいよ」
「ほんと?良かったわ」