「慎、もういいよ…?」
控えめに呟いた言葉に意識がしゃんとする
「翼、車に乗っててくれ」
痺れを切らした秋也が仔猫を車へと誘導する
乗る直前…
「待ってる…」と涙目になっていたが笑って見過ごした
秋也は運転席に行き「先に家に」と呟く
どうやら気をつかって秋也は別の車で行くらしい
「承知しました」
たった数秒の間に車にエンジンがかかり、発進した
車内で翼がじっと下を向いているのがわかった
きっと涙を我慢しようとしていたのだろう…
「優羽ちゃんね…可愛いな、秋也の仔猫ちゃんは」
少しだけしんみりした空気を空笑いで吹き飛ばす
「っせーな…」
秋也はなんとも釈然としない顔をしている
「どこで拾ったんだよ?」
「………道ばた」
「…あっそ」