---春


「…-っ、華衣!起きな!今日入学式でしょうが」

 開け放たれたカーテンの間から降り注ぐ朝日の眩しさに目を潤ませながら、と言うか、姉の朝から何の遠慮もない大声で目が覚めた。

「んあ?もうなに朝から…」
「だ-か-ら-、入学式!遅れるよ!」

 …はい?

「え…今日だっけ?」
「はぁ?なに寝ぼけたこと言ってんの!」

 …ははは、まじですか。いやまさか。

「いやまじドッキリとかいいから。寝起きドッキリですか」
「あんた大丈夫?」

 いやいやいやいや。
 ちょっドキドキ止まれ心臓っっ。

「ほらっ急がないと本当に遅刻よ!」

 え、ちょ、待って。頭働かない。

「…今日何日?」
「え?12日」

 カレンダーを見る。
 12日に、赤いペンでしっかり“入学式”と書いてあった。

 …やばいやばいやばい…っ!

「夢?これ夢?だって昨日10日だったしっ」
「つべこべ言わず早く準備しろっ!」
「はっはいぃ!」

 橘華衣<タチバナケイ>15歳。今年から高校生。
 初っ端から慌ただしい高校生活の始まり--。