「……ドキドキ、しないんですか?」

「ッ、へッ?!」


私は一瞬何を言われたか分からず、聞き返そうとした。


「いや、何でもないです!!」


葵くんはハッとしたように口をつぐんだ。


“ドキドキ、しないんですか”って……、


「……してるよ、凄く。」


私は、葵くんに聞こえないほどの小さい声で、呟いた。


「ぇ??」

「何でもないよー♪」

「そっか。」

「ごめん、お手洗い行ってくるね。」


私は逃げるようにお手洗いに駆け込んだ。