「優しいなあ、彼女。お前が体操服忘れてったからって、わざわざ学校まで届けに来てくれたんだぜ」
分かった。
こいつの言っている彼女の正体。
「帰り際に言ってたぜ。「斗馬さんによろしくお伝えください」ってさ!」
間違いない。
優子だ。
「最初は服織女の姉ちゃんかと思ったけど、姉ちゃんは弟のこと『斗馬さん』なんて呼ばねえもんな。ほんと、人って見かけによらねーな!」
「ちょっと待てよ!それは違う!」
真相を悟ったらしい凌が止めに入ってきた。
いつもの女々しい口調がかなり厳しいものに変わっているから、俺のために相当感情を乱してくれているらしい。
「何が違うんだよ矢神。お前は仲良いから知ってたんだろ?服織女のこと。あ、違った。『斗馬さん』、だったな」
「お前、いい加減にしろ!もうっ……斗馬クン、本当のこと言ってやんなよ!」
もどかしそうに地団太を踏んだ凌が、強い目で俺を急かす。
だけど俺は首を横に振った。