「いいじゃん、そんなの気にしないで。勇気を出して強引に行かないと、このままじゃずっと気まずいよ」
ピーマンの肉詰めを頬張りながら、凌が俺の肩を小突いてくる。
冷凍食品が一切入っていない凌の母親手製の弁当は、今日も見栄っ張りで豪華だ。
「いいんだよ、もう。俺は諦めたんだ」
最初に感じた疎外感がすべてだった。
あの家に、俺の居場所はない。
婆さんがいたときと変わらない、むしろ妙な気を遣わなきゃならない分だけ悪くなったかもしれない。
それに親父も、もう俺の味方じゃないし。
焼きそばパンを頬張る。
今日のは、いつもよりソースがしょっぱいな。
「ねえ、みんなと仲良くなるっていう選択肢はないの?」
溜息交じりの問いが、この擦り切れた精神を刺激する。
やめてくれ。
ちらりと思い出すだけでも苦痛なんだ。
「その話はいいって言ってるだろ。飯が不味くなる」
言い方が過剰にきつくなる。
凌に当たってもしようがないのに。
ごめんな。
それも言えずに押し黙っていると、視界の端に茶色の物体が進入してきた。
「イライラしちゃダメだよ。ほら、お食べ」
笑顔の凌が、箸で唐揚げを差し出している。
こういうことをされると、己の器の小ささが際立ってへこむだろうが。
その上ここでこれを拒否すればますます狭量な人間になってしまいそうで、自棄になった俺は野良犬のように唐揚げに噛みついてやった。
「おお、元気になったね。よかったよかった」
全然元気じゃねえよ、馬鹿。
でも、こんな凌のペースに巻きこまれていると、いくらか気が楽になる。
こうなるのを分かってやってくれてるんだろうな。
俺にはとてもできない。……