青々とした葉を茂らせた木々が、燦々と降り注ぐ日差しを浴びて鮮やかに生命力を振りまいている。
それは目と鼻の先にある風景のはずなのに、ガラス窓一枚隔てれば、まるで別世界。
こちら側には、チョークが黒板にぶつかる音が絶え間なく響く無機質な空間が広がっている。
魔法のようにあっと言う間にできあがっていく文字の川を、一滴も溢さぬように頭に流しこみながらノートに写すのは、息をするのも忘れるほどの集中力が必要だ。
効率至上主義の授業。
以前は大嫌いだったこの時間が、今はありがたい。
余計なことを考えずに済むから。
「はい、今日はここまで」
猫背の幸薄そうな男性教師がこちらを向いた瞬間、チャイムが鳴った。
教室が溜息で満ちる。
超高速で進行していく授業は少しでも気を抜いたら振り落とされてしまうから、とても体力を使う。
ここでは毎時間が戦いだ。
でも、戦いのあとにはご褒美がある。
俺は強張った体をほぐすため肩を回しながら、さりげなく隣の席へ目をやった。