「何の話してんだよ」


「うっさい!いいじゃない、何でも!」


「ほらほら、仲良くしろって言っただろ」


親父は再び俺の元へ来ると、俺の両肩に手を置いた。


「一番年上なのに、お前がしっかりしないでどうするよ?」


なんで俺に言うんだ。

悪いのは先に突っかかってきたガキの方だろう。

反論しようとしたら、急に肩が締めつけられて全部喉の奥に引っこんだ。


「なあ、お兄ちゃんだもんな」


親父の指が肉に食いこんで痛い。

普段なら叫びたいくらいの痛さなのに、声が出せない。

黙れ。

親父の目が、そう言っていた。


「えっと、心愛ちゃんだったかな。ごめんな、こいつ悪い奴じゃないんだが、子供っぽいところがあって。今日のところはおじさんと優子ちゃんに免じて許してやってくれないか?」


「おじさんは関係ないけど、優子のためだったら……仕方ないかな」


「そうかそうか、ありがとなあ。じゃあ、そろそろ暗くなってきたし、今日はお家に帰ろうか」


「はぁい」


威嚇しっぱなしだった小娘が、ふてくされながらも素直に帰り支度を始めた。


「私、そこまで送るから」


優子が上着を羽織って、玄関へ走る。


「また遊びに来てな、心愛ちゃん」


「言われなくても来るから!」


憎まれ口を叩き、最後まで俺を睨み続ける小娘を優子がいさめながら、二人は出て行った。