言い放たれた無礼に、血液が逆流する。

これ、キレてもいいよな?


「……お前こそ、人に対する口の利き方がなってねえな。サルにでも育てられたのか、このクソガキ」


「はぁ?ちょっと優子、言ってたのと全然違うじゃん。こいつマジ口悪いし、人間ちっさい!」


「やめて、心愛がそんなふうに言うから……」


「だってこいつ優子のこと睨んだよ!絶対、勉強しかできないプライドの塊なんだって。性格悪いんだって!」


「てめぇ、ガキだからって何言っても許されると……」




「そこまでにしなさい」




大きな手に肩を掴まれる。

いつのまにか、背後には親父が立っていた。

親父は笑顔で、声だって穏やかなのに、なぜか圧倒されて息を飲んだ。


「ケンカはよくないなあ。仲良くしなきゃダメだろ」


親父は俺と小娘の頭をそれぞれ軽くなでたあと、部屋の真ん中にあったミニテーブルを優子の部屋に移動させた。


「おじさん、ごめんなさい。私が心愛にちゃんと説明しなかったから、斗馬さんを怒らせてしまったんです」


「大丈夫、分かってるよ優子ちゃん」


少し走り気味で喋る優子のことも、親父は優しくなでる。


「おじさんに、斗馬さん……?」


小娘が、訝しげに優子を見た。


「この人達のこと、そんなふうに呼んでるの?」


優子は小さくうなずく。

忌々しそうに「別にいいけど」と吐き捨てる小娘。

会話の意味が分からなくて、無性に神経が逆なでされた。