なんだって?
あの優子に友達なんかいたのか。
まず、そこが意外だった。
次に、俺や親父の知らない誰かをこの家に連れこんでいることに、苛立ちがわき上がってきた。
俺は遠慮して凌と遊ばなくなったのに、越してきた方が事前の報告もなしに人を家に上げるって、どういうことだ。
これは一言物申さねば気が済まない。
俺は肩を怒らせ、ふすまを開けた。
……これは。
開け放たれたカーテン、部屋のど真ん中に置かれたミニテーブルの手前、明らかに俺の部屋であぐらをかいている小娘がいた。
肩まで届かない色素の薄い巻き毛を、右上だけ赤いボンボンでくくった、幼稚な髪形をしている。
猫のような丸みを帯びた釣り目が実に生意気そうだ。
優子は然るべき自分の部屋で正座しているようだが、この状況を許している時点で同罪だ。
「どういうことだ」
語尾が震えた。
苛立ちが怒りに変わっていく。
人の領域を勝手に荒らすのは許されることじゃない。
優子は置物のように何も言わない。
もう一度尋ねると、動いたのは小娘の方だった。
「へえ、これが優子の『お兄ちゃん』かぁ」と小動物染みた身軽さで立ち上がると、俺につかつかと歩み寄り、上から下まで舐めるように見定めて。
「なんだ。ただのチビじゃん」
「なっ……!」
言葉を失った。
「たしかに制服着てるから神世に行ってるみたいだけど、私服じゃ絶対高校生には見えないわ。中学生って言われても怪しくない?しかも、いきなりキレてくるし。なんなのコイツ!」