すると、凌はさも嬉しそうに「えへへ」と笑った。


「デレデレすんな。何なんだよ」


「まあまあ怒んないでよ。じゃあさ、どうして彩花さんと優子ちゃんは嫌なのかな」


「それは、」


……おかしい。

すぐに答えが出て来なくて焦る。

嫌だっていうのは反射的に出てくるのに。

どうして俺は、あの親子が嫌なんだ?

だって、だって。


「だって……当然だろ。他人、なんだから」


そう、そうだ。

あの二人は他人だから。……


「でもさ、斗馬クンは一緒に暮らそうって言われたとき、拒絶しなかったんだよね。じゃあ、それってもう他人とは言わないんじゃない?」


「な、そんなことない、俺は拒絶しなかったんじゃなくて出来なかったんだ!」


「それはあの親子には関係ないことだよ。斗馬クンがどう考えていたって、NOというサインを出さなかったのなら、二人は斗馬クンが受け入れてくれたと思っちゃうよ」


空を見たまま、凌は続ける。


「オレはいいのに、あの二人はダメ、だって他人だから。それっておかしくない?だって、オレと斗馬クンだって他人だよ。血なんて繋がってない。オレもあの二人と同じ。それなのに、斗馬クンは二人のことを嫌って言う。矛盾してるよね。どうしてかな」


口調はいたって普段と変わらないのに、その言葉は俺の味方じゃない。


なんだよ、これ。


「なんで、そんなこと言うんだよ……!」


こいつ、本当に俺の知ってる凌なのか?

とっさにその肩を掴み、こちらを向かせると、静かな瞳に射抜かれた。


「彩花さんと優子ちゃんを、どう思ってるの?」


「だから、他人だって……」


「違うよ。斗馬クンがオレのことを仲のいい友達だって……たぶん……面倒なとこあるけど、でも憎からず思ってくれているように、斗馬くんがあの二人をどう思ってるのか、聞いてるんだよ」