心地いい陽気にもかかわらず、今日も公園に子供の姿はなかった。
土管の、凌は一段目、俺は二段目に腰かける。
ぶらぶら揺れる凌の足を見ながら、俺はぽつぽつと話した。
部屋が暗くて不便なこと。
遠慮してしまうからテレビも自由に見られないこと。
三度の飯の時間を強制される上に、出てくる料理が美味くないこと。
衣類は自分の分だけまとめてコインランドリーで洗うことにしたこと。
そうすると出費がかさんで破産しそうなこと。
知らないうちに便所の隅に三角コーナーが置かれていたこと。
他人の気配がする家では息が詰まってしようがないこと。……
「なんか、台所で茶碗を洗っている音が聞こえるだけで気が狂いそうなんだ。だって、知らない人間が同じ空間で普通に暮らしてるんだぜ。俺の領域だった場所で、他人が飯食ったり寝たり起きたりしてる。知りたくもないことや知られたくないことも丸見え。もう、耐えられねえよ……!」
いよいよ泣きそうで、ごまかすために何度も鼻をこすったら、いさめられた。
「そんなにしたら、お鼻が真っ赤になっちゃうよ」
「うるさいっ」
こんな口の利き方しかできない俺を、凌は怒らない。
そうだなあ、と良く晴れた空を見上げ、丁寧に言葉を選ぶようにゆっくりと問いかけてきた。
「もしさ、一緒に住むのがオレとだったら、斗馬クンは嫌がったかなぁ」
「なんだ、その例え話」
「いいから答えてよ。もしオレと住むんだったら、斗馬クンはどう思った?」
そんなの言うまでもないだろう。
「嫌ではないな」
「それはどうして?」
「どうしてって……付き合い長いし、気心も知れてるし。まあうざったくなることもあるだろうが、その辺の付き合い方は心得てるつもりだから、問題ないだろ」