嫌な汗がぶわっと背中から噴き出す。

身を乗り出していた優子が、静かに正座してうつむいた。


「ごっ、ごめん!」


俺はパンツを放り投げ、自分のトランクスだけしっかり握りしめて自室へ走った。

ふすまをきっちり締め切り、敷きっ放しだった布団にもぐりこんで、これ以上ないほど小さく丸くなる。

恥ずかしい、恥ずかしい、死にたい!

こんなに格好悪いことはない。

女の下着を初めて見られたってのに、全然嬉しくない。

逆に事故にでも遭ったかのように心がズタズタだ。


やっぱり同居なんて無理だ。

プライベートがこんなにも駄々漏れになる空間で、赤の他人と無事に共存できるわけがなかったんだ。


と、足音が聞こえてきてぎくりとする。

優子がこっちに近づいてきている。

ブラジャー踏んでパンツ顔に乗っけて走って逃げた時点で最低なのに、その上布団の中で震えているところなど見られたらお終いだ。

俺は掛け布団を吹っ飛ばして起き上がり、ふすまを開けた。


目の前には、今までより少し目を見開いた優子がいた。

こちらに右手が伸びているから、ふすまを開ける寸前だったんだろう。


「あの、」


「自分の着てるもんは、自分で洗濯するから!」


何か言われる前に早口で言い切る。


「俺のことは放っておいてくれて構わないから、気にしないでいいから!じゃあおやすみ!」


そして間髪入れずふすまを閉めた。

一瞬何か言いたげな優子の顔が見えたが、気にしていられなかった。