会話のないどんよりとした夕飯のあと、優子が洗濯物を畳み始めた。

今日は天気が良くなかったようで、親父と彩花さんの部屋に干して除湿機で乾かしていたらしい。

もちろん除湿機なんて家庭的なものは龍ヶ崎家から持ちこまれたものだ。

働き者なんだな。

親の仕事の都合上、ずっと家のことは任されてきたんだろう。

几帳面な畳み方だ。

洋服はきっちり大きさをそろえてあるし、俺のトランクスもみるみる綺麗に折り畳まれて……って。


「ちょっと待て!そそそそれは、な、な」


「え?」


なぜ、きょとんとしてるんだ。

会って間もない人間の、それも異性の下着を触って、どうしてそんなに平気な顔してるんだよ!


「いい!もういいから、あとは俺がやるから!」


「でも……」


まだ手のつけられていない洗濯物の山と優子の間に割り入って、戸惑うその手からトランクスを奪い取る。


「た、頼むから、もう……」


こんなことはしないでくれ、と言おうとしたのだが、何かを踏みつけていることに気がついて下を見た。

ふわっと柔らかい。これは……。


「おわっ!」


足の下にあったのは真っ赤なリボンのついたピンク色のブラジャーで、驚いた俺は飛び退こうとしてバランスを崩し、洗濯物の山に背中から倒れこんだ。

その拍子にいくつかの布が舞い上がって俺の顔に落ちてきた。


「斗馬さん、大丈夫ですか?」


あまり心配しているようには聞こえない硬い声に返事をしようと、顔の上の布をつまみ上げてみて、固まった。


たぶん、これは、さっきのブラジャーとおそろいのパンツだ。