「豪華だな」


つい口から感激がこぼれてしまったのだが、優子が顔色一つ変えず「普通です」と返してきたので、若干傷ついた。

ちょっとテンションが上がりかけたってのに、そんなにバッサリ切り捨ててくれなくてもいいじゃないか。


「いただきます」
律義に手を合わせる優子。

これって毎度きっちりやらなきゃならないものなんだろうか。

どうも幼稚臭くて萎える。


それでも期待して箸をつけた料理は、残念なことに見た目ほどの味ではなかった。

ハンバーグもお浸しも、何か物足りない。

素材の味がそのままというか、美味いといえば美味いのだが……まあ手作りなんてこんなものなんだろう。


しかし、味噌汁は駄目だった。

味は薄過ぎるし、具の火の通りにもバラつきがあるし、全然美味くない。

たまたま失敗したのか、それともこれが精一杯なのか。

作った本人を横目でうかがうと、特に変わった様子もなく淡々と箸を動かしている。

俺の味覚がおかしいってことか?

その可能性は否定できないが、それが真実だとしても俺自身は美味しく感じないのだから、それならインスタントやレトルトを食べていた方が気も楽でよかった。

作ってもらった手前、脅迫観念に駆られて全部平らげたが、これは精神衛生上良くない。

食事中、優子がこちらの様子をうかがっているような感じがするのも疲れた。

食事さえストレスになってしまうなら、俺は何を楽しみに生きればいいんだ。