「ど、どうも……」


一応礼は言ってみたが、解せない。

いや、卵焼きは好きだけど。

これは間食なのか?

龍ヶ崎家のおやつは卵焼きなのか?

すると俺の戸惑いが伝わったのだろう、優子は小さい声で言った。


「朝に作ったのが残っていたので」


そうか、これは寝こけていた俺のために取ってあったのか……。

肩身が狭くなる。

でも、朝に作った卵焼きを二度焼き――おそらく焦げ目がついているのはそのせいだ――してまで出してくれるってことは、そこまで不愉快な奴とは思われていないのかもしれない。

腹は減っていたし、ありがたくいただこう。

味は……うん、作ってから時間が経ってるし、二度焼きなんだから、何も言うまい。


それからしばらくして風呂を勧められたので、お言葉に甘えた。

先に入るのは気が引けたのだが、女の子が浸かったあとの湯を使うのは申し訳ないというか、いけないことをしているような気持ちになるというか。

別に優子のことをいやらしい目で見ているとか、そういうわけじゃない。

むしろОLや若妻に見える特殊な小学生をそんな目で見られる奴の気が知れない。

でもどんな見た目であれ女の子であることに変わりはないから、いろいろ気を回してしてしまうのだ。

そして俺が浸かった湯を使わせるのも忍びないので、浸かりもせずに頭と体だけ洗って出てきた。

もちろん風呂場をくまなく点検して抜け毛が残っていないか確認するのも忘れない。

昨日もそうした。

気持ち悪いと思われるのはごめんなんだ。


風呂から上がると、夕飯の準備ができていた。

彩花さんが作り置きしていったものと思われる煮込みハンバーグとほうれん草のお浸し、優子が作った味噌汁、それから白米。

壮観だ。

婆さんはものぐさで毎食おかずは一品だけだったし、その婆さんが出て行ったあとは、安いし簡単だからインスタントラーメンばかりだった。

こんな夕飯はテレビでしか見たことない。