マジでか。

あの人、俺と身長あまり変わらないくらいだったぞ。

それで、あんな重労働をしてるなんて、にわかには信じがたい。


「本当に?」


「……?本当です」


この人、どうしてこんな分かりきったことを聞いてくるのだろう、とでも言いたげに首をかしげられてしまった。

本当に本当らしい。

あまり問い詰めるのもどうかと、それ以上確認することはよした。

どれだけ人を驚かせば気が済むんだ、この親子は。

まだ何か飛んでもない事実を隠しているというのなら、小出しにしないで早いところ全部教えてほしい。


しかし、彩花さんが親父と同じ仕事をしているのだとすれば、俺はほぼ毎日優子と二人きりでいなければならないってことだ。

それって、何というか、気まずさが増すような気がする。

年下との接し方を俺は知らないし、なにより相手は普通じゃないし、何考えてるか全然分からないし、なんか恐いし。


優子はネギを切り終えて、それを保存容器に移している。

会話が途切れて手持無沙汰になった俺は、背中を丸めて台所を横切り、ちゃぶ台の前に座ってテレビをつけた。

ザッピングして目に留まったのは教育テレビでやっている昔ながらの国民的アニメだったが、この手はニュースにチャンネルを合わせる。

ちくしょう、人目が気になって自分を曲げるなんて情けない。

頭を抱えこんでうじうじしていたら、優子が台所から出てきた。


「夕飯まで少し時間があるので、よかったら」


目の前に置かれた皿の上には、ちょっと焦げ目のついた、湯気の立つ卵焼きが五切れ。

……なぜ卵焼きなんだ?