凌は事情が分からないらしくきょとんとしているので、フタを開けて中を見せてやると。
「ああ、これかあ」
箱の中身に似つかわしくない非常に爽やかな笑顔で思い出してくれた。
エロ本まがいの雑誌、際どい萌え漫画、アイドルDVD、エトセトラ。
これは全部コイツが持って来てはここに置き去りにしていったもので、気がつけば溜まりに溜まってこんな山のような量になっていた。
どれも一目でいかがわしい内容だと分かるが、実は未成年でも合法的に手に入れられるものばかりってところが抜け目ない。
お前は女に嫌悪感を抱いているんじゃなかったのか、という指摘が聞こえてきそうだが、俺だって健康な少年だ。
矛盾しているのは分かっているが、そういう欲求を持ち合わせていたって生理現象なんだから咎めないでやってほしい。
それに、このやたら肌を露出した悩ましげなお姉さん方は、いろいろうるさく言わないしな。
大変お世話になって感謝しているし名残惜しいものの、こんな状況になってしまった以上、ここには置いておけない。
「頼むから持って帰ってくれ」
「無理」
即答で拒否とはどういう料簡だ。
「お前の家の方が広いんだから、いくらでも隠し場所があるだろ」
「そうは言ってもオレの部屋、定期的に母さんのチェックが入るんだもん。徹底的に調べ尽くされるから無理。こんなものが見つかった日には、母さんが発狂して家庭崩壊しちゃうよ」
涼しい顔でさらっとヘビーな身の上を明かしてくれるな。
冗談だろ、と笑い飛ばしたいが、あの人ならやりかねない。
むしろ活き活きと家探ししている様が容易に思い浮かんでしまうから恐ろしい。
「それは、仕方ないな……」
「押しつけちゃってごめんね。でも、どうしても無理なときは、もったいないけど捨てるしかないかなぁ」
「いや。捨てるくらいなら、どうにかしたい」
俺は段ボールのフタを閉め、くたりとちゃぶ台に突っ伏した。
今の時点でさえ不便なことがいくつも頭をちらついているというのに、実際に同居が始まったら一体どれほど不便になってしまうのだろう。
想像もつかない。