それに比べ俺ときたら。

何もないときにでもやたらとキャーキャー喚かれるわ、反応を面白がられるわ、しまいにはこう言われるのだ……『可愛い』と。

そこに異性に対する恥じらいなんて存在しない。


「俺は遊園地の着ぐるみのようなもんなんだ」


溜息をもらしつつ教室後方の棚に頬杖をつくと、ヤツも体を縮めて俺の横に並んだ。


「どういうこと?」


「女ってのは、本当に男を意識するとしおらしくなる。騒ぎ立てられる俺は女子からマスコットくらいにしか思われてないんだよ」


「まあ確かに、斗馬クンは体がコンパクトでお人形みたいな顔してるからマスコットっぽくはあるけど」


「……男にお人形みたいっていうのはないだろ」


「斗馬クンは嫌がるけどさ。実際可愛いんだもん。いい加減認めなよ」


「でも、あいつらの言う『可愛い』ってのは全部あいつら自身に向けられてる言葉なんだぞ。俺は利用されてるんだ」


「うわあ、それはまた陰湿な考えだね。そういうの嫌いじゃないけど、とりあえず元気出しなって。ほら、斗馬クンはカッコイイねー」


やばい、と思えど時すでに遅し。

体をがっちりホールドされた俺は、額に感じる生温かい柔らかさを、鳥肌を立てながら享受するしかなかった。