「お邪魔しました」
「斗馬くん、またねー!」
「じゃあ俺は二人を送って来るから」
龍ヶ崎親子にひっついて親父も出て行き、俺はまた一人ぽつんと居間に取り残された。
嵐が去ったあとみたいだ。
引っかき回されて荒れ果てた心に静けさがしみる。
今までの出来事は何だったのだろう。
白昼夢でも見ていたような気になるが、手元にある三枚のプリクラが、あれは現実だったのだと教える。
彩花さんが「あげる!」と満面の笑みでくれたものだ。
どれにも笑顔の彩花さんと無表情の優子さんが肩を寄せ合って写っている。
仲が良いんだな。
だったら、二人で生きて行けばいいじゃないか。
別に、俺達と一緒に暮らさなくたって、それで充分幸せだろうに。
「あー」
背中から倒れて、天井を仰ぎ見た。
昨日、凌と二人で見たのと同じ天井のはずなのに、全然違って見える。
たった一日で、こんなにも景色は変わってしまうのか。
同じような毎日が続いていくのだと思っていた。
ずっと、ずっと。
それなのに。
「言えなかった……」
嫌だ。
たった一言でよかったのに。
あんなに心の中で繰り返したのに。
俺は、流されてしまった。
変化を望んでいたのは確かだ。
でも、これは違う。
全然違うんだ。
「これから、どうなっちまうんだ……」
見えない先を見たくなくて、俺は目を閉じた。