でも、頷いてたまるか。

見ず知らずの他人、それも女がいる家に住むなんて考えられない。

これまでの自由気ままな生活ができなくなるってことだろう?

好きなときに適当なものを食ったりだとか、夜通しゲームしたりだとか。

これまでしんどい学校生活に耐えていられたのは、家で好きに過ごすことでガス抜きができていたからだ。

それができなくなったら、俺は一体どこで安らげるんだ?

俺の居場所はどうなる?

絶望的だ。


正直に嫌だと言ってやる。

じゃないと、このまま話が進めば俺はどうにかなっちまいそうだ。

不登校の家出少年にでもなったらどうしてくれる。

そうだ、これは神世に通う優秀な息子を誇りに思っている親父のためでもあるんだ。

はっきり言ってしまおう。


「親父、俺は……」


「まあ、突然こんなこと言われてもびっくりするだけだよな!」


嫌だ、という言葉は親父の張り切った声に上書きされてしまった。

今の、ワザと……じゃないな。

親父は天然だから。

きっと、本当に舞い上がって周りが見えなくなっているんだろう。


「いくらなんでも心の準備もなしに知らない人と一緒には住めないよな。だから、とりあえず顔を合わせるだけでもしてみてほしいんだ」


調子に乗った親父は手がつけられない、というのは俺が神世を受験させられたときに、しかと思い知らされている。

嫌な予感がした。


「今日これから、二人がここに来ることになってるから!」


絶句、という言葉はこういうときのためにあるんだな。