目が覚めた。
寝ぎたない俺が、春休み始まって早々まだこんな日も昇らないうちに、しっかりばっちり起きてしまった。
なぜって、理由ならはっきりしている。
何者かが、うちのドアを乱暴に開けようとしているんだ。
がちゃがちゃうるさい。
鍵がかかってるんだから、いくら回したって開かねえよ。
こんな時間に不躾に、一体誰なんだ。
ここまで賑やかな泥棒などいるはずないから、きっと朝帰りの酔っ払いが家を間違えてるんだろう。
たぶん、そんなところだ。
と冷静に考えてはみるものの、やっぱり得体の知れない者に侵入されかけているというのはそこはかとなく不気味で、布団から出て玄関まで行き、ドアの覗き穴を確認するまでに結構な決心と時間を要したのは、俺が特別に臆病だからってわけじゃないだろう。
誰だって、こんな事態に遭遇したらビビるに決まってる。
おそるおそる、外の様子をうかがって……脱力した。
予想通り、覗き穴の向こうには朝帰りの酔っ払いがいた。
ただし、その酔っ払いのことを俺は、よく知っている。
ほっと胸をなで下ろしながら解錠してドアを開けてやると、ガタイのいいおっさんが倒れこんできた。
「斗馬ぁ、ただいまぁ」
「ちょっと、重い重い!しっかりしろよ!」
両脇の下に腕を差しこんで支えてやると、強烈な酒の臭いが鼻についた。
どんだけ飲んできたんだ。
こんなことは滅多にない。