「そんなのおおきくなってからするものだろ。おれはいらない」


「ちっちゃいのにおべんきょできるから、ママうれしいですよ。てんさいってほめてくれるですよ」


子供とは実に単純なもので、天才、という言葉に俺は反応してしまった。

だってなんだかすごく格好いいじゃないか。


「ほんとか。べんきょうすればてんさいになれるのか?」


「そうですよ、がんばるとなれるです!」


えらく自信満々なのは、それなりの実績があるからなんだろう。

天才、か。

こいつがなれるなら、俺もなれそうだ。


「……べんきょう、してみようかな」


「わわわ、おべんきょするですか!じゃあ、ぼくがおしえてあげますです、せんせーよ!」


「おまえがせんせい?」


「そうです!あ、おなまえいってなかったの。ぼく、やがみりょうっていうです」


「おれは、はとりめとうま」


「はと……?」


「とうまでいい」


「とうまクン!よろしくのあくしゅですー」


ふにゃふにゃの笑顔で差し出された肉づきのいい手を、俺は少し緊張しながら握った。




そう、これが凌との出会いだった。