それは、浮世離れした美人で、いつも全てを悟りきった無表情で、何を考えているのか分からないふうにしているけれど、実は臆病で、思いやりがあるのにそれを表現できない、不器用な、頑張りやで、家族思いの、とびきり優しい心を持っている、俺の。……
「俺の妹だ」
沈黙。
案の定、この場にいる全員が言葉を失った。
「……こ、この期に及んでそんな、ふざけた嘘つくなんて、汚えぞ!あんな綺麗なお姉さんがお前の妹なわけないだろ!」
「嘘じゃないよ!」
突然、力強い助っ人が現れた。
「早乙女さん」
「服織女くんの妹さん、優子ちゃんっていうの。すごく大人びてるけど、可愛らしい小学生の女の子だよ。私、知ってるの。優子ちゃんとお友達だから!」
学園のアイドルに熱弁されては、さすがのコイツも勢いをなくして後ずさるしかない。
「で、でも早乙女さん、服織女のやつ、ぼろっぼろの団地に入ってったんすよ?どう考えても密会のための仮住まいじゃないすか。あんなの人がまともに住む所じゃ……」
「悪かったな。あいにく俺は生まれてこの方ずっとあそこに住んでんだ」
「団地も悪くないよ。風情があって、落ち着くし」と、凌のフォローが入る。
「はあ?冗談きついぜ……。この神世に通ってて、まさか底辺だなんて言わねえよな」