無音。

読んで字の如く、何も音がしない。




……喜んでは、もらえなかったのだろうか。

俺のセンスが駄目だったのか。

やっぱりもっと可愛らしいのにすれば。

いや、そもそもこんなものいらなかったのかもしれない。


「ごめん、余計なことしちまっ……」


最後まで言えなかった。

俺の渡したものを胸に抱き締めている優子の目から、止めどなく涙が溢れていた。


「えええ、ちょ、俺、ごごごめん!」


そんなに泣くほど嫌だったのか?

表情はいつもと同じなのに、涙だけ出てるって、どういうことだ。

俺はもうパニックになって、ぼたぼた音を立てて落ちる涙を手で受け止めようとしたり、優子の周りを行ったり来たり。

そうこうしているうちにティッシュが視界に入ってきて、俺はそれで慌てて優子の頬を拭ってやった。


「……これ……」


「な、なんだ?」


涙の止まらない瞳に、滲んだ俺が映る。


「私、欲しかった……です」


ベージュ色のサテン生地に、ゴールドのビーズと七色に光る小さなスパンコールが散りばめられたシュシュ。

優子に似合うと思って、選んだんだ。


「それでよかったのか?」


優子は深くうなずくと、一度鼻をすすった。


「どう、して?」


どうしてって、なんで俺がこれをお前に渡したのかってことか?


「それは、優子が元気ないから、喜ばせたいと思って……」


すると涙はますます溢れて、弱々しい手が俺にすがりついてきた。