「お待たせしましたー」
うろうろしていた俺の元へ戻って来たとき、二人はすっかり打ち解けていた。
かたや涼しげな美人、かたや愛らしい美少女。
こうして並んでいる様は神々しくて、周りの視線を吸い寄せまくっている。
そんなことなど気にも留めていない優子の手には、真新しいメモ帳が大切そうに握られている。
これを買うために文具コーナーへ行ったのか。
「電話番号交換しちゃった!今度遊ぼうね、優子ちゃん」
「ぜひ」
いつもの「はい」じゃない。
「ぜひ」って、そんな積極的な返事は初めて聞いたぞ。
普通に話せるようになるまで俺はえらい大事をしたっていうのに、ほんの短い時間でこんなにも優子の心を開かれてしまうと、喜ばしいんだが、正直悔しくもある。
しかし優子、早乙女那美の電話番号って、えらく貴重なものを手に入れたな。
そのメモ帳、俺も欲しい。
だからって実際に電話する勇気はないけれど。
「じゃあ、服織女くん。また明日、学校でね」
「ああ、また明日」
「優子ちゃんもバイバイ」
「さようなら」
幸せを振りまくかのようにスカートを翻して去っていく彼女に手を振る優子は、満足そうに見えるが、心なしか寂しそうでもあった。