バスに乗って、隣町のショッピングモールへ。
二人連れ立って外に出るのは初めてで、ちょっと落ち着かない。
俺達って、周りからはどんなふうに見えるんだろう。
まさかカップルとは思われないよな。
そわそわしながら九つ目のバス停で降りようとしたとき、優子が運転手のおじさんと親しげに話し出して焦った。
「あれ、優子ちゃん。お出かけ?」
「はい。お疲れ様です」
定期券を差し出しているのを見て、優子がバス通学だったのを思い出す。
こんな小学生は珍しいから、運転手の間で有名になっていてもおかしくはない。
可愛がられているのなら何よりだ。
「今日は弟くんと一緒か。ちゃんとお姉ちゃんやってて偉いねえ」
……って、おい。
今の台詞は聞き捨てならねえ。
俺は優子の後ろから「高校生です」と学生証を提示して料金箱に大人運賃を入れた。
「えっ神世の学生さん?」
「今後とも優子をよろしくお願いします」
鳩が豆鉄砲食らったような顔の運転手に恭しく礼をして、バスを降りた。
まったく失礼しちまうぜ。
ぶすっとしていたら、
「あの運転手さん、悪い人じゃないんです」
と優子がおずおずとおじさんをかばったから、俺は慌てて本気で怒っているわけじゃないと釈明しなければならなかった。
いや、実際カチンとはきたのだけれど、だってまさか弟と言われるとは思わないじゃないか。
小学五年生以下に見られたってことだぞ。
いくら優子と並んでいるからって、それはあんまりだろう。
恋人に見られるかも、なんて一瞬でも思った俺が馬鹿みたいだ。
そんなに俺、ガキ臭いか?
「斗馬さんは手と足が大きいから、きっと大きくなると思います」
励ましたくて外に出てきたのに、逆に励まされてしまった。
早乙女那美みたいなことを言ってくれるんだな、お前は。
「ありがとな」
優子は首を横に振った。そして、すぐにうつむいてしまう。
どうやったら元気を出してくれるのだろうか。