夢見の悪い朝を迎えた。

一晩経っても心の納まりの悪さを拭えない俺と同様に、優子もどこか上の空。

とても授業なんて受ける気にはなれそうになくて、今日が日曜日で本当に良かったと思う。


昨日の事故で、奇跡的に死者は出なかったと、テレビから聞こえてきた。


「よかったなあ」


努めて明るく言ってみたのだが、優子はうつむいたまま。

食は進んでいなかったし、家事をする手も止まりがちで、このままじゃどんどん落ちこんでいってしまうんじゃないかと心配になってきた。

何事もなかったんだから、いいじゃないか。

こんなときには、きっと気分転換が必要だ。

俺は勇気を出して提案してみた。


「どこか、出かけないか?」


優子が様子をうかがうように俺を見つめてくる。


「い、行きたくないなら別にいいんだけど……」


すぐに返事がないと、気持ちがくじけてしまいそうになる。

早く何か言ってくれ。


「……行きます」


うさぎのあくびみたいな小さい返事に、俺は胸をなで下ろした。