……嘘、だろ。


「本当か?間違いないのか!」


「わからない……」


画面の奥、横転した大型トラックの傍で救急車の赤ランプが点滅している。

リポーターの口からは、まだ怪我人の情報は出ていない。


「お父さんのときと……おんなじ」


急に、背筋が寒くなる。

優子は幼いころ、事故で父親を。


「お母さんが……お母さんも……!」


「そんなわけねえだろ!」


硬直している優子の手を握り締め、焦点の合わない瞳に無理矢理俺を映しこんで、叫んだ。


「あれは彩花さんのトラックじゃねえ!俺が確認してやる!」


不安を煽るだけのテレビを消し、彩花さんに電話をかける。

携帯の番号は暗記していた。

大丈夫、また前のようにすぐに出てくれる。

そう自分に言い聞かせて辛抱強く呼び出し音を聞いていたが、ついに留守電に切り替わってしまった。


どうしてだ。

どうして出てくれない。

焦る気持ちを懸命に静めて、今度は親父の携帯に電話する。

親父なら何かしら彩花さんとすぐに連絡を取る手段を持っているかもしれない。

しかし望みも虚しく、こちらでも留守電のアナウンスを聞かされた。


受話器を置く。

こんなときに限って、二人とも出てくれない。

まさか、親父もあの事故に巻きこまれているんじゃないだろうな。


「斗馬さん……?」


不安に満ちた声が俺の背中を撫でる。

優子の恐怖が俺にまで感染してしまいそうで、振り向けないまま電話帳をあさった。

こうなったら会社に連絡してみるしかない。

手が震えてきた。

「ちょっと落ち着こうか」……彩花さんの言葉が蘇る。

そうだ、落ち着くんだ。

俺は深呼吸をして、ダイヤルを回した。