その夜も、俺と優子は二人で作った夕飯を、二人で食べていた。
家中の窓を、ほぼ常時開けていなければならない季節になっていた。
貧乏人はエアコンなんて贅沢なものは使えない。
だから俺達はせめて涼を得ようと、そうめんに氷を浮かべた。
バラエティ番組はどれもくだらなくて肌に合わないから、テレビのチャンネルは常々お堅いニュースに固定されていたが、最近は特に大きな事件もなくて、やはりこちらも公共の電波の無駄使いとしか思えないような、しようもない話題ばかりを垂れ流しているのだった。
「日本って平和だな」
「平和が一番です」
「そうだな。ネギもっといるか?」
「ください」
暑さにしなびたネギを山盛りにしたつゆに四、五本のそうめんを埋めて、ネギまみれになったそれを音もなく口へ収めていく。
麺類をすすらない、上品なのか粋じゃないのか良く分からない優子のこの食べ方も見慣れた。
蝉が鳴いている。
時計の針は夜を知らせているのに、西の空には夕陽が残っていて外はまだ少し明るい。
汗が流れそうで、額を手の甲で拭う。
「もうすぐ夏休みだな」
「そうですね」
「何か予定あるのか?」
「心愛と一緒に宿題します」
「宿題って……もう少し子供らしく遊べよ」
「すみません」
いや、謝らなくてもいいんだが。