その日以来、少しずついろんなことが変わった。

例えば、俺はコインランドリーに行かなくなった。

さすがに干して畳むのは自分でやるが、洗濯物は誰のものと区別せずに一度にまとめて洗う。

その方が節約になるし、気にしすぎるのも逆に意識してるようで気持ち悪いって気がしてきたからだ。

風呂も、その日の雰囲気で俺が先だったり優子が先だったり。

ちゃんと湯船にも浸かる。

それから、彩花さんの負担を減らすため、俺と優子二人で晩飯を作るようになったとか、あとは……俺達の部屋を仕切るカーテンが、着替えのとき以外ほとんど開けっ放しになったとか。


互いの領域に神経質にならなくなったおかげで、俺はイライラしなくなったし、優子は俺に気を遣わず自由に部屋を出入りするようになった。

そうして発見したのは、優子の人間らしさ。

ぬいぐるみを飾っていたり、心愛から借りてきた少女漫画を読んでいたり、ちゃんと女の子なのだった。


「それ、面白いか?」


「面白いです」


勉強している傍ら、なんとなく尋ねてみると、案外熱のこもった声が返ってきた。

そう言われると内容が気になってくるじゃないか。

こっそり表紙だけ盗み見ると、顔の半分はあるんじゃないかってほどデカい目をした女の子が水着ではしゃいでいた。

小学生の読むものだから、もちろんいやらしさは皆無なのだが、その奇抜な色遣いが、以前ここにばら撒かれたいかがわしい雑誌達を連想させて、頬がカッと熱くなった。