お玉で一口分だけすくって小皿に注ぎ、優子に味見させる。


「おいしいです」


パチパチと、優子が一人で拍手を始めた。

こういうことをする子なのか。

新たな発見に驚きつつ、ここは乗っかってみようと俺も拍手してみた。


「斗馬さん、お勉強だけじゃなくて、お料理もできて、すごいです」


「これで優子も美味い味噌汁が作れるようになったな」


言った直後に、これは嫌味だったかもしれないと心配になったが。


「はい。教えてくれてありがとうございます」


深々とおじぎをされて、だじだじになる。

ほんと、素直で真面目なんだな。

感心していると、思いがけないことが起きた。


「優子!生きてる?」


なんと彩花さんが帰って来たのだ。

予定では、明日まで仕事だったはずなのに。


「ダッシュで仕事終わらせて帰ってきたの!よかった、元気そうにしてるじゃない!」


彩花さんは優子をめいっぱい抱きしめて頬ずりしている。

やっぱり心配していたんだ。

それなのに、電話では冷静に俺に指示をくれた。

母親ってすごいんだな。


「……あれ?ところで、二人とも何やってるの?」


はた、と我に返ったらしい彩花さんが、不思議そうに俺と優子の顔を交互に見る。


「斗馬さんが、お味噌汁の作り方を教えてくれたの」


「斗馬くんが……?」


ものすごく意外、という顔だ。

無理もない。

俺は以前の行いを省みて「すみません」と頭をかいた。

ところが。