初夏とはいえまだ朝は気温が低いのに、ドラッグストアに着いたとき俺は汗だくになっていた。
ジャケットが暑苦しいが脱いでいる暇も惜しくて、そのまま薬売り場へ向かう。
薬剤師らしき白衣の若い男性が俺に気づき、おや?という表情をしたが、すぐに眠そうな顔に戻って「いらっしゃいませ」と会釈をしてきた。
「あの、これが欲しいんですけど」
少々緊張しながらポケットから取り出した薬の箱は、走った衝撃で随分へこみ歪んでいた。
白衣の彼は箱を手に取り、裏返し、納得したように頷いてそれを俺の手に戻し、抑揚のない声で言った。
「小児用の解熱鎮痛剤ですね」
横っ面を思いきり殴られたような衝撃が走った。
そうだ。
優子は、まだ小学生だったんだ。
分かってはいたが、本人があんなふうだから、すっかり感覚が狂っていた。
今、事実をまざまざと見せつけられ、ようやく思い知る。
いくら落ち着いていたって、大人びて見えたって、優子は俺より四つも年下の、まだ普通の薬も飲めない、ほんの子供だったんだ。……