「うそっ!」
「こんなときに嘘なんか吐きませんって!」
「ありゃりゃ……じゃあ、ごめんけど斗馬くん、買って来てくれる?普通に薬局で売ってるから、お店の人にその箱を見せたらすぐ分かると思う。お金はいざというときのために電話の下の引き出しに入れてあるから、それ使ってね。学校終わってからでいいからさ、お願いします」
学校が終わってから?
俺は横たわっている優子を見た。
このまま何時間も放って置けっていうのか。
ただでさえこんな硬い所で一晩中苦しんでたってのに。
こうなったのは全部、俺のせいなのに。
「……いや、今すぐ行きます」
「えっ、そんな、ダメだよ!学校があるのに……」
「そんなのどうでもいい!今から行ってきます!」
俺は叩きつけるように電話を切った。
引き出しを漁って五千円札を見つけ出し、解熱剤の箱と一緒にポケットにつっこむ。
そして自室の押し入れから毛布を引っ張り出してきて、それを優子の体が全部しっかり隠れるように丁寧にかけてやった。
毛布越しでさえ伝わってくる高過ぎる体温に、胸が締めつけられる。
「待ってろ、すぐに薬買ってきてやるから」
聞こえていないことは承知で呼びかけて、俺は家を飛び出した。