「何してんだ」
優子はこちらを見ないまま答えた。
「掃除、しようと……」
これまでのことが走馬灯のように、真っ赤になった視界を駆け抜けていく。
もう、限界だった。
「俺に関わるな!目障りなんだよ!」
その肩にかかる黒髪が、ほんの少し揺れた気がした。
「……ごめんなさい」
消え入りそうに呟いて、優子は部屋を出て行った。
呼吸が乱れる。
ろっ骨を突き破りそうな勢いで心臓が暴れ出す。
言ってしまった。
ひどいことを、言ってしまった。
転がっている掃除機を見る限り、本当に掃除をする気だったのだろう。
でも、散らばった雑誌やDVDを見ると、どうしても許せない。
恥ずかしさや気まずさより、怒りが先に立つ。
なんで、そんなところに手をつっこんだんだ。
昨日といい、今日といい、どうしてそんな余計なことばかり。
その場に膝をついてうずくまる。
爪が掌に食いこむほど強く拳を握りしめる。
額を畳につけて歯を食い縛ったら、整然と並ぶ縫い目にぽたりと水滴が落ちた。
「……ちくしょうっ……」
こんなふうに言いたいわけじゃ、なかったのに。……