「調子に乗るのも大概にしろよ」


誰だ、このドスの利いた声。

と思ったら、凌が教室のドアに片腕を預けて立っていた。

ちょっと格好良いじゃないか。いつもそうやって凛々しくしてればいいのに。

剣呑な雰囲気で歩み寄って来る凌に恐れをなし、小者はさっさと姿をくらました。


「おはよう、斗馬クン。大丈夫だった?」


ああ、せっかくの超絶イケメンが間抜けなイケメンに戻ってしまった。


「なんともねえよ」


「そっかあ。よかったー」


この雰囲気の中、早速いつものように過剰なスキンシップをしようと近づいてくる凌の肩を、俺はめいっぱい押し返した。


「お前、もう俺に近づかない方がいいんじゃないか」


「え?」


「俺と一緒にいたら、お前まで妙な目で見られちまうだろ」


今だって、ものすごく注目されてる。

お前までこんな扱いを受けることはないだろう。


凌はしばし固まっていたが、たちまち俺の足元にひざまずき、感極まったように胸に手を当てて言った。


「斗馬クン……チューしてもいい?」


「アホか」


どうやらこいつがいる限り、俺は不登校にならずに済みそうだ。