タバコに火をつけて、二三口吸ったところで、結ちゃんが戻ってきた。
白い小さな封筒のようなものを手にしている。僕は慌てて火を消して、結ちゃんを助手席に招き入れた。
再び助手席に座ると、結ちゃんは
「たぶんこれだと思うけど。ほら、同じ絵柄が書いてある」
と、その封筒を僕に手渡してくれた。
白い封筒は薄っぺらく、右の隅に薔薇の絵と「Hybrid Tea garden」と黒い字で書かれている。
「ハイブリッドティー ガーデン?…て読むのかな。お店の名前だろうか。変わった名前だな。
Teaて書いてるし、カフェか何か?」
「貸して」
僕の手から封筒を奪うと、結ちゃんは目を細めて
「カフェかどうかは分かんないけど、ハイブリッドティーてのは薔薇の品種の一つだよ」
「へぇ」
僕は薔薇の種類なんて全くの無知だし、結ちゃんが居てくれて助かった。
結ちゃんはケータイを取り出して、ネットの検索項目にその名前を入れた。
「あ、出た!やっぱお店の名前だよ。
雑貨屋さんみたい」
結ちゃんは開いたホームページを見せてくれて、そのホームページにはいかにも女の子が好きそうな白い家具や調度品をはじめ
ハンドクリームやボディケア用品なんかの化粧品類も紹介してあった。
アンティーク風の……若い女の子が好みそうな一軒家だ。
「場所は……ここからあんまり離れてないか…」
描かれている簡単な地図を目に入れていると
「でも、さすがに今日は無理そうだよ。
閉店時間19時ってなってる。あと五分で19時だし」
一緒にケータイを覗き込んでいた結ちゃんが目をまばたきさせる。
「さすがに今日は無理か…。ごめん電話番号とか載ってる?一応控えておくよ」
僕がケータイを取り出すと、
「ホームページのURL送ってあげる」
と言って結ちゃんは手馴れた動作ですぐに僕のケータイにそのページを送ってくれた。