「あたし、先生みたいな人が彼氏に欲しいな」
ぽつり…
結ちゃんに言われてまたも僕の言葉が止まった。
奇妙な沈黙が流れて、
「いや……
ね!
先生ってあたしのダメなとこ、嫌なこといっぱい見て知ってるはずなのに、
いっつも優しいなーって思って。
まぁ…あたしを女と意識してないからだろうけど」
結ちゃんは「あはは」とわざと明るく笑って、でも前髪で必死に頬に浮かべた薄紅色を隠そうとしている。
「結ちゃんはダメじゃないし、嫌じゃないよ。
人間誰しも欠点があるし、それを認めて受け入れることが出来る人が
結ちゃんにとって本当に必要な人なんだよ」
ハンドルを握ったまま前を向いて言うと、
「……うん、ありがとう」
結ちゃんは俯いたままそっと呟いた。
またも僕は口を噤んで、今度こそ二人とも何も喋らず奇妙な沈黙のまま何とか森本の家まで着いた。
「先生、近くで待ってて。あたし一人で見てくる」
そう言われて僕は頷き、結ちゃんが森本家に入っていく姿を見届けると、なるべく目立たない場所に車を停車させた。
ギアをP(パーキング)に入れてサイドブレーキを引くと
「はぁー…」
無意識に深いため息がでた。
無性にタバコを吸いたくなった。