「え…でも結ちゃん今から合コンでしょう…?流石に悪いよ」
僕は慌てて手を振ると
「その話、嘘だから」
結ちゃんはティーカップをテーブルに乗せて、ちょっとつまらなさそうにそっぽを向いた。
え……
嘘??
「気晴らしにお洒落して町で買い物でもしようかな~って思ってたところで、先生の車を見つけたの。
ここに入っていくのが見えたから、
偶然を装っただけ。だから気にしないで?
あ、あたし別に先生のこと尾けてたわけじゃないよ!
ホントにちょっとお喋りできたらそれでいいか、って思ってただけ。
何か…先生カウンセラーみたいで色々喋れるし」
最後の方は早口でほとんど聞き取れなかったが、結ちゃんの言いたいことは分かった。
僕はすっかりぬるくなったコーヒーを一飲み。
今の言葉で、結ちゃんの優しい嘘に気付いた。
「気遣わなくていいよ。それが嘘でしょう?
今から合コンだろう?
せっかくチャンスなんだし、行ってきなさい。
新しい恋が見つかるかもしれないよ?」
僕が笑って結ちゃんにほんの僅か手を振ると、結ちゃんは考えるように俯いた。
「新しい恋―――
もうはじまってるもん」
小さな声で言われて僕がその言葉に耳を傾けていると、
「チャンスは今あたしの今目の前にあるもん!
先生は今彼女と別れてるし、別れたばかりだから違う女の子とか言われても急に無理かもしれないけど
でもあたしにとってはチャンスなの。
少しでも先生の助けになりたいの。
先生の役に立ちたいの」
真正面からそう言われて―――僕は再び目を開いた。