『俺には亜実だけなんだよ……けど亜実は、ちょっと目を離したらどっか行きそうで…』
抱きしめながらそう言う俊は、
普段聞くことのない、弱い声でつぶやいた。
壊れそうなくらい、
強く強く私を抱きしめて。
そして、私からは涙がこぼれた。
「私も、俊だけだよ……だから、安心して……あんな怖い顔や、こんな弱い声、ださないで……」
涙が、どんどんこぼれた。
さっきの怖さを我慢していたぶんよりも、
細くて弱い、つぶやく声を聞いて。
「私は、どこにも行かないから…」
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…