「いずちゃんがね…直樹のこと好きになったんだって…」


フロントガラスに映る渋谷の街並みに、少しずつ緑が増えていく。


ハンドルを握っていた陽介が、こっちを向いた。


驚いたような表情が視界の隅に入り、顔を俯けた。


ごめん、いずちゃん…。


いずちゃんが直樹のこと好きなんだってこんな簡単にペラペラ話して、本当にごめん…。


でも、私も今話さなきゃ無理なくらい気持ちが張り裂けそうなんだ。


グッと唇を噛んだ後、鳴り響く心臓の音の中顔を上げた。


「私も…直樹が好き…なんだと思う」


言い切れなかったのは、恥ずかしかったのもあるけど、自信がなかった。


初めて誰かのことを好きだと口にする自分。


それは本当にそうなの?


好きって感覚はこれで合ってる?


…親友の好きな人を好きになった自分は、悪いことをしてるんじゃないの…。