鞄持ってくれは良かった…。


財布がなきゃ電車にも乗れないし、何も買えない。


とっさに出てきたから、持ってきたのは首にぶら下げていた携帯だけ。


携帯…。


勢いよく携帯を手に取り、着信履歴を下に下げていく。


きっと陽介なら助けてくれる。


さっきまで見ていた記憶の笑顔にすがる気持ちで、携帯を耳に当てた。


早く出て。


コール音が私を焦らせる。


「もしも」


「助けて!!」


声を遮りそう叫んだ。


「え…どうした?」


「施設にいたくない!母親のこと思い出すの」


そう言いながら、抑えていた感情が溢れ返り涙が溢れ出てきた。