「ゼンはね……


好きな女に「好きだ」ってことも伝えられないような男よ?

小さな頃から、ずっと窮屈な生活をしてきて、彼は常に『利口』でいなきゃならなかった。

だから、あんなに人を騙すのが上手になっちゃったの。


好きな相手にすら、自分の本心伝えられない弱い男なの

きっと淳一くんのこと、心の底から羨ましいと思ってるはずよ」


「ゼン所長が……?」


確かに詐欺師だなんて堂々と名乗って、あれだけ色々目の当たりにして、猿芝居に騙されて……

そりゃ家庭の事情は複雑なんだろう。
まともな家庭であれだけぶっ飛んだ性格に育つはずがない。



ただ、そんなの俺の知ったこっちゃねー。



「アイツの好きな女って、誰なんすか?」