チャイム後間髪入れずに始まる授業に、私は最初から緊張していた。


 どうしよう。もし、当てられたら何と答えれば。


 とにかく話を聞かなければ…そう思っていたところだった。



「お、今日はいつもやる気がなさそうな奴が、熱心に授業を聞いてるな。村前。今書いた問題、答えてみろ」



 それが裏目に出ようとは思っても見ず。今の私の顔は、相当引きつっているに違いない。私の名前――村前 藍、同じ名字の人は、教室内にいない。


 最悪だ。今書いた問題?まさか読み上げもしないだなんて私の中では想定外。


 どうしようか。相変わらず汚い字だ。読めるはずない。もっと綺麗に書いてから、私を指名してくれと頼みたい。


 問題すら分からず、口を閉ざしていると。



「……だから言っただろ、ほら」



 かたん、と机に何かが置かれる。太陽の手が私の机に置いたのは、眼鏡。


 使え、ということか。小さくありがとうと呟いて、私は震える手で眼鏡を掛ける。


 太陽が、いつも使っている眼鏡。考えるだけで、心臓ははち切れる寸前。



「あ……えっと、…御成敗式目は法律的な意味を持っているのに対して、建武式目は政治方針を表したものだった…?」


「正解。あー、みんなもここよく覚えておけよ。明日試験の解答解説終えたら、小テストするかも知れないからな。満点以外は居残りだ」



 不満の声が上がるも、小テストは二授業に一度のペースである、恒例行事。避けることは出来ない。


 答え終わった私は、直ぐに眼鏡を外し、さっと太陽の机の上に置いた。