私の隣は、七番の人。一体誰なのだろう、期待と不安が入り混じる。もしかして……そう思ったら、まさかだった。



「……藍」



 私の隣の机に、鞄と教科書類をどさっと音を立てて置いたのは、紛れもなく太陽で。


 嬉しい反面、何か失態を犯してしまったら、という気持ちの方が、少し大きい。



「隣、藍なのか。よろしく」


「う…うん」


「困った時は言えよ?ちゃんと助けるから」



 小さく頷いて私は俯く。大した会話でもないはずなのに、心臓が煩くて堪らない。


 優しくされると、密かな淡い希望を、どうしても抱いてしまう。だけど、太陽は誰に対しても、平等に、優しく接する人だから。


 私だけなんて、有り得ない。そう思ってしまう。


 後ろの黒板を振り返ると、……まさか。日本史は、一時間目。これから直ぐだった。


 慌てて教材を引き出しから取って、机の上に乗せる。一つ足らないものを思い出して、私は目を伏せる。


 誰か前の席の人に、一時間だけ席を替わってもらおうか…そう考えても、実行に移せない。妃奈と由奈以外に私がまともに話せる人は、このクラスにはいないということを、間もなくして思い出したから。