朝のホームルーム。担任が教室に入ってくる。


 私は眉を寄せて、なよなよして威厳のないその先生の、ビン底のように分厚い眼鏡を見ていた。


 ―――……いっそあれでもいいんだけどな、一日の我慢だし。そんなことを思ってしまう。


 挨拶を済ませ、連絡事項。そして、昨日の帰りに妃奈が言っていたからだろう、席替え用のくじを、もう出してきた。



「それでは…えっと、視力等の関係で、前の席に着きたい人は――」



 私は、手を上げようと身構えてはいた。けれど、突然静かになった教室に、どうにも気が引けてしまって。


 どうしよう。戸惑っていると、袋ごとくじを持った担任が、もう教室を回り出す。とうとう言い出せずに一枚引いてしまった私は、一つ溜息を零した。


 こんな筈ではなかったのに。先生に怒られるのだけはごめんだ。


 前の席、前の席。そう祈りながら、予め書いていた座席表に数字を埋めていく担任の手元を、凝視していた。


 私の番号は、二十三番。……二十、二十一、二十二、…。


 先程とは比べ物にならないくらい、大きな溜息。今の席の一つ後ろ、これでは黒板は見えない。


 時間が無いからと言った担任に数人がごねて、急ぐようにと言われつつ移動が始まる。私は、後ろの席に自分の荷物を移す作業に入る。


 頬杖をついて、私が気にするのは、太陽一人。気づかれないように、ちらちらと様子を伺っては、素知らぬ振りを繰り返す。