最初にこの距離を感じたのは、小学校四年生の時。丁度男女仲が割れてきて、話したくとも話し辛くなってくる頃。


 中学校に上がって、また少しずつ、その距離は埋まっていった。それもまた、周りの影響。


 完全に無くなりはしなかったけれど、それでも以前は、声を掛けるくらいのことは、平気で出来ていたのに。それさえぎこちなくなっていったのは、いつから、どうしてなのだろう。



「……お、藍?」



 私の視線を奪っていたその背中は、突然姿を消した。変わりに目に映ったのは、大好きなその笑顔。だけど、あまりに眩しいそれを直視することは出来ず、私は少し視線を外す。



「おは、よ……」


「はよ。どーした?元気ねーけど」



 ―――気まずいなんて私だけ。彼は至って、幼い頃のまま。何も変わらない、そう思えれば、私もどれ程かは楽だろうに。


「ううん、なんでもないよ」



 何と情けないことだろう、返事をする時さえ、相手の顔を見られないだなんて。


 自分の視線は、表情筋は、不自然に動いてはいないだろうか。如何程不安に駆られようと、自らそれを確認する度胸は無いことが、多少辛くは感じる。



「そうか?」



 隣の大欠伸を横目で見つつ、目の前に迫っている改札に定期入れを取り出す。昨日試験後に買ったばかりの新品。


 ……まさか。