一瞬、呼吸を忘れた。全身が凍り付いた。


 見たら分かる。緊張した面持ち、少し赤らんだ頬。私と話しているにも関わらず、宙を彷徨う視線。



「た、太陽なら…そこに」



 私は、敢えて自分で声を掛けず、彼のいる隣の席を示す。


 そこに声を掛ける彼女の姿に、私は胸が痛かった。


 ……これは、つまり。今日こそ、私も。



 教室を出ていく二人。私は見ているのも辛くて、妃奈と由奈との会話に無理やり没頭する。



 諦め時、ということだろうか。



 気にしない、気にしない。どんなに言い聞かせても、浮かぶ二人の姿。


 太陽は。…何と答えるのだろう。もしそれが後ろ向きな返事でも、まだきっと、思いを秘めている子は沢山いる。


 いいや、もともと諦めているようなものだった。気にしてはいけない。



 結局数学も、その次の英語も、戻ってきた答案の点数すら覚えていないくらいには上の空で。


 六時間時制だったため、帰りのホームルームを終えて、もう下校時間となった。