「―――ん、らーんっ!」


「もう、お昼だよ?大丈夫なの、藍」



 四時間目を終えて呆けきっていた私に、妃奈と由奈が声を掛けてくれる。


 いつも三人で食べるお弁当。前は彼女たちの席が前後だったからそこで食べていたけれど、今回は全員ばらばら。



「今回は藍の席で食べよ?前いつも移動して貰ってたし」


「え……っいいよ!私動くよ」


「ううん。それに、壁際だと横を通る人も少なくて、ゆっくり食べられるから」



 由奈は笑って言うけれど、私はそれどころでなく。


 そっと隣の席を見ると、同じ中学に通っていた男子と、一緒にご飯を食べている太陽。


 せめてお昼くらい離れていないと、心臓が持つ気がしない。……意識しすぎだと、自分でも分かっているけれど。



「ん?どしたの、藍」


「あ…っな、なんでもないよ?……食べよっか」



 お弁当の巾着袋を開けて、私は食べる準備。気にしない、気にしない。その振りだけでもしないと、日常生活に支障を来す。



「いただきまーすっ」



 席の主より早く食べ始める妃奈に、苦笑いを浮かべる由奈。


 そんな二人を微笑ましく思いながらも、隣の席が気になって仕方ない、私。