-夏菜side-


もう少しで1年生が終わるし。


そう思って1週間ぶりに校舎の方へ来てみた。


となりに玲央がいるからいいけど、それでも男子から妙に気持ち悪い視線が降りかかってくる。


………私何もしてないはずなのに。


怖くなってとっさに玲央の手を掴んでしまった。


「夏菜?、どうした?顔が真っ青だぞ!部屋戻るか?」


「いいの....。なんか変な視線を感じて....。」


「あぁ...。そういうことだな。」


私がそう言うと玲央はイラつき始めた。


かなり分かりづらいが、玲央が怒るときは必ず右眉が動く。


かすかに動くだけだからほかの人から見たらただのクールフェイスに見える。


本人は気づいているのか判らないが、私とユリはとっくに承知済みだ。








「なぁ。お前は前の学校に戻りたいと思うか?」


「どうしたの、急に。」


いきなりなんだろう。


「お前は名家の令嬢だということを知った上でここにいるだろ?ユリは自分の立場をまだ知らないせいでひどい目にあっている。」


「確かにね....。玲央は秋本家の執事なんでしょ?裃に来る前軽く沙那様から素性を聞いたけど………。

どうしてユリは何も知らないの?」


「止められてるんだ。俺だって教えてあげたいんだが。」


「誰に?」


「....奥様に。」


少し沈黙ができてしまった。